平成22年度は、日本でのプログラム実施2クール目ということで、広く地域で子育て中の親に参加を募り、COSプログラム(日本語名称を「親子がホッとつながるグループ」とした)を提供した。4組の親子が参加を希望し、介入前のアセスメント(親子相互作用観察と養育者の表象インタビュー)により、各親子の治療計画を立てた。2組の親子には、それぞれの事情に答えて個別に対応を行った。残る2組を対象に、COS開発者であるBert Powell氏による助言を受けながら、8月から1月までの合計11セッションを行った。介入後半に再び撮影した親子相互作用観察(ストレンジ・シチュエーションに基づく観察)では、子どもは親にアタッチメント欲求を率直に訴えやすくなっており、養育者は子どものアタッチメント欲求への応答性が高まるという介入効果が認められた。介入後のインタビューから、参加した親もプログラムの効果を実感しており、地域の親の子育てにおける困難さに役立つ内容であった。効果検証のために、介入前後にアタッチメント行動尺度、アタッチメント投影的測定法、養育者の表象インタビューをしており、これらを通して検証した介入効果について、平成23年度に学会で発表予定である。 また、平成21年度に実施したCOSプログラムの介入と効果について、6月に世界乳幼児精神保健学会(WAIMH)で発表をし、アメリカで開発されたプログラムが日本人親子にも有用であることと、日本で実施するために必要な工夫について有益な議論をすることができた。9月の日本心理学会でも、COSを通して親の主観がどう変化したのかについて報告し、この介入が養育行動のみならず、子どもの視点に立って欲求を理解する親の能力を改善する効果があることが議論された。
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