研究概要 |
本研究の目的は聴覚と視覚の時空間知覚表象の統合過程を明らかにすることである。21年度は,19個のスピーカを円弧上に2.5°間隔で配置したスピーカアレイを作成し,マルチチャンネルのオーディオボードを搭載したPCですべてのスピーカを完全に同期して制御可能か刺激呈示装置を構築した。さらにLEDを各スピーカに取り付け,同じオーディオボードからの出力で明滅させることで,視聴覚刺激の同期呈示を可能にした。この装置を使って,三つの短音を継時的に異なるスピーカから呈示し,これらの音の空間パターンが呈示時間間隔によってどのように変化するのかを確かめた。その結果,短い時間間隔で呈示された音の間の距離が長い時間間隔で呈示された音の間の距離よりも短く感じられる現象を発見した。これは,すでに他のモダリティにおいて知られている時空間情報の相互作用(Tau効果)と効果の方向としては同様の傾向を示しているが,効果の生じる条件において他のモダリティとは異なった傾向を新たに発見した。この現象の生じる原因を探るために,三つの短音の空間定位位置を測定したところ,ある音の時間的前後両方に音を呈示することでその音の定位位置が変化することを発見した。ただし,この実験についてはまだデータが少なく22年度にも継続して実験を続ける必要がある。平行して,視聴覚刺激を同時,もしくは継時的に呈示した時のクロスモーダルた時空間パターン表象の測定を行うための予備宝験を開始した。先の実験で明らかになった時空間情報の相互作用における視覚と聴覚の違いをうまく活用することで,マルチモーダルな時空間マップの形成過程を記述できると考えている。
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