研究概要 |
報告者はこれまでの研究の中で、潜在的な視覚的文脈学習によって選好処理が影響される現象を発見した。ただし、これまでの研究では厳密に統制された幾何学図形による刺激画面のみを用いてきた。そのため、実際の日常場面において私たちが直面する非常に複雑な視覚場面における選好処理に、単純な画面を用いて得られた研究知見をそのまま当てはめるのは困難である。 本研究課題の目的は、これまでの実験で使われてきた刺激画面を徐々に複雑化することによって、最終的に自然場面における人間の選好処理における文脈学習の役割を明らかにすることである。そのために、「選好処理における文脈学習と注意処理の相互作用の解明」と「選好処理に対する複数の文脈情報の影響」の2つのサブテーマを設定して、研究を遂行する。 本年度は、主に、「選好処理における文脈学習と注意処理の相互作用の解明」に関する実験的検討を行った。その中で、視覚的文脈処理に2種類の学習過程が存在し、異なった特性を持っていることを明らかにした(Ogawa & Watanabe, 2010 ; Perception誌)。これから選好処理に複数の学習過程がどう影響しているのかについて検討を進める予定である。 また、「選好処理に対する複数の文脈情報の影響」に必要な自然画像の刺激データベースの作成が終わり、顔刺激や物品刺激などを用いた実験系が確立できた。今後、研究計画に従って確実に研究を遂行していく予定である。
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