研究課題
本研究課題の目的は、これまでの実験で使われてきた刺激画面を徐々に複雑化することによって、最終的に自然場面における人間の選好処理における文脈学習の役割を明らかにすることであった。本年度はまず、日常場面に近い実験刺激として顔画像刺激および日常物体画像刺激を作成し、それらから構成される擬似的視覚場面における文脈情報の役割を検討した。検討を進める中で当初は想定していなかった、顔刺激に特異的な潜在学習の個人差が見いだされた。さらに実験的検討を進めたところ、観察者の自閉症スペクトラムスコアと潜在学習量の間に有意な負の相関が認められ、個人の自閉症傾向が顔に対する潜在学習処理に影響していることが示唆された。さらにこのような相関は、顔のアイデンティティに基づいた視覚的文脈学習時にのみ認められ、顔の布置情報に基づいた文脈学習時には認められなかった。この知見は、自閉症傾向をもつ観察者の潜在的な文脈学習処理の特異性を示唆するものであり、重要な知見であると考えている。またこのほかにも文脈が変化した際の再学習が生起するかどうかを規定している要因をいくつか特定することができた。これは日常場面における文脈学習の柔軟性を示す意味で、重要な意味を持っている。これらの知見は現在データの蓄積を進めつつ、論文化の作業を行っており、近いうちに投稿までこぎ着ける予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Attention, Perception, & Psychophysics
巻: (印刷中)
Technical Report on Attention and Cognition
巻: 20 ページ: 1-2