研究概要 |
本研究の目的は,以下の2点である。 1.漢字を構成する部品に含まれる意味情報と,その部品を含有する単漢字自身の意味情報との一致性を明らかにし,データベース化する。 2.漢字構成部品の音韻的情報および意味的情報が,漢字全体の認知よりも前に活性化されるか否かを明らかにすることを目的とする。 本年度は昨年度の研究結果を基に,以下に報告する1つの実験を実施した。また,構成部品の意味的情報が,漢字認知過程に及ぼす影響を検討するために,21年度に作成したデータベースを用いて,刺激項目の選定を行った。 実験1:「左右分離漢字を構成する右部品の音韻的典型性と右部品と単漢字との音韻の一致性が語彙判断課題の遂行に及ぼす効果の検討」 本実験では,Fujita & Masuda (2008),藤田(2010)と同様の実験パラダイムを用い,プライマーとして呈示される擬似漢字の右部品の音韻典型性と右部品と単漢字自体の音韻(読み)との一致性を操作し,音韻的典型性の高低および部分と全体との音韻一致性の有無によって,語彙判断課題におけるプライミング効果量に差異が生じるか否かを検討した。その結果,音韻的典型性と音韻一致性が語彙判断課題に影響することが確認された。しかしながら,プライミング効果は認められなかった。本実験結果は,実験参加者サイズが小さかったことによる影響を受けている可能性が否定できないため,引き続きデータを収集し,再度分析を行う必要がある。 なお,21年度に実施した調査結果は,現在の所属先である南山大学の個人HPにおいて,データベースとして公開の予定である。
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