研究概要 |
本研究では,fMRIによる脳活動の画像情報から知覚内容の推定を行うデコーディングの手法を用いて,単に見ているものの内容を推定するだけではなく,脳の領野ごとのデコーディングの正答率を比較して各領野の機能の違いについて検討することを目的とする.正答率の高い部位は刺激の特性に関連したコーディングをおこなっているはずであり,正答率を指標として脳内で処理している情報を推定することができる.本研究では,未解明な点の多いヒトの3次元知覚の脳内処理過程を取り上げ,両眼立体視における相対視差,絶対視差の処理,および物体内,物体間の奥行き知覚の処理に関して,これらが脳内のどの領野で処理されているかを検討する.平成21年度は,相対視差と絶対視差について検討するため,2つの面間の相対的奥行き差(相対視差)は同じだが,絶対視差が異なる刺激を設定し,それらを観察したさいの脳活動を計測した.得られた脳活動情報を用いて,2つの面のどちらが手前に提示されているかの判別を視覚野ごとにサポートベクターマシンにより機械学習させ,学習後のテストデータには学習時とは絶対視差が異なる刺激の脳活動を用いて,学習の般化が生じるか検討した.般化が認められれば,その領野では相対視差を処理していると推定される.領野ごとの般化の正答率を比較した結果,初期視覚野よりも後の過程で相対視差を処理していることを示唆する結果が得られた.また,奥行き位置の異なる面間の相対視差の相互作用を心理物理学的手法で検討し,局所的な物体間の相対視差による対比効果の影響で物体内部の奥行き構造の知覚が変化することを示した.
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