研究概要 |
本研究では,知覚・行動連関のダイナミックな特性の解明を目的として,視覚刺激と電気前庭刺激をリアルタイムで操作し,身体運動とオンラインで連動する実験装置・手法を用いて,自己運動感覚,姿勢制御,歩行進路,進行方向知覚,および進行方向操作等に関する心理物理学的知覚・行動実験を行う。特に,視覚と前庭の線形加算モデルおよびフィードフォワード制御とフィードバック制御の線形加算モデルの構築と検証を目指す。その最大の特色は,「身体運動に連動してオンラインで知覚入力(視覚,前庭感覚)を制御する」実験パラダイムを用いることである。これによって,刻一刻と変化する外界情報に対して,ヒトがどのように対応しているのかというダイナミックな知覚・行動連関の解明が可能となる。今年度(初年度)は,身体運動をモニタし,それに連動してオンラインで視覚刺激および電気前庭刺激を制御する実験システムを構築した。これを用いて,自発的な自己運動に連動した視覚刺激あるいは前庭刺激を提示し,それに7日間順応することで,視覚誘導性身体動揺と前庭誘導性身体動揺がどのように変化するかを調べた。その結果,各モダリティ刺激を増幅するような条件に長期順応すると,相対的に順応したモダリティによる身体動揺が増幅した。したがって,姿勢制御について,視覚情報および前庭感覚情報の重み付け線形加算モデルがある程度適用可能であり,また自発的運動と連動した長期順応によってその重みを変化させることが可能であることが示唆された。本研究成果について,国際会議にて論文発表(口頭)し,さらに分析と考察を追加した後に原著論文(英語)として学術雑誌に投稿した。
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