視覚によって特定の対象を探し出す「視覚探索」は、私達の日常生活において重要な行動のひとつである。本研究では視覚探索中の注意制御を研究するための新たな分析方法を確立することを目指して、視覚探索中に生じる微小な眼球運動の一種であるマイクロサッカードの検出を試みた。昨年度の研究によってマイクロサッカードの検出方法を改善する必要があることが明らかになったため、本年度はまず複数のマイクロサッカード検出方法の比較を行った。その結果、視覚探索中に検出された注視を連結した軌道に対して従来のマイクロサッカード検出アルゴリズムを適用してマイクロサッカードの候補となる眼球運動を抽出し、それらの候補のうち注視開始後20msec以内または注視終了前20msec以内の運動を排除してマイクロサッカードとする方法を選択した。昨年度実施した視覚探索実験と同一の実験を新たな参加者を募集して実施し、データの量を昨年度の約2倍に増やして、新たなマイクロサッカード検出アルゴリズムを用いて分析を行った。その結果、昨年度に報告した視覚探索課題のターゲット刺激の有無によってマイクロサッカード頻度が変化するという結果が、主に実験参加者がターゲットの有無をボタン押しによって報告する直前の2回程度の注視におけるマイクロサッカード発生頻度の差によって生じていることを確認した。さらに、本年度はマイクロサッカードの方向と探索画面の関連について詳細な分析を行った。分析は現在も継続中であるが、マイクロサッカードが注視位置近傍のアイテムの方向へ向いていることを示す分析結果が得られている。この結果は、マイクロサッカードが探索中の注意の移動を反映していることを示唆している。
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