研究概要 |
4~6歳の幼児を対象に,自称詞の使用と他者視点の獲得,心的用語の使用との関連を検討した.自称詞の使用については保護者へ質問紙調査を実施した.他者視点獲得については,被験者に心の理論課題,三山課題を実施した.心的用語使用については,被験者に自身と友人の人物像を語らせた. 1.一人称代名詞使用と自称詞使い分けとの関連自称詞として一人称代名詞を使用する子どもは,そうでない子どもよりも,相互作用の相手や場面に応じて自称詞を使い分けることが多いことが示された.一人称代名詞の使用と自称詞の使い分けは,他者との関係性の中で自分の立場を調整しながら表明する能力の発達と関連していることが示唆された.対話の場における話し手と相手の具体的な役割を明示し確認するという自称詞の機能(鈴木,1973)の発達を表していると言えよう. 2.使い分け有児における一人称代名詞使用と他者視点取得との関連自称詞の獲得は,他者から物理的に何が見えるかの理解(物理的他者視点)との関連よりも,誤信念の理解などのような心理的他者視点との関連の方が強いこと示された.この結果は,自称詞の獲得には自分とは異なるものとしての他者の視点の獲得が関連していることを示唆していると考える. 3.自称詞使用と心的用語使用自称詞を使用しない子どもでは心的用語の使用が少なかったことから,自称詞使用と心的用語使用とは関連することが示された.この結果は,自称詞と心的用語を使用する能力とが共に,他者との区別において発達する自我との発達と関連することを示唆していると考える. 4.自称詞使用と記述された人物の内的心的属性自称詞の使用は自分自身の内的心的属性を語る能力とも関連することが示されたが,他者の内的心的属性を語る能力とは関連が示されなかった.この点については,被験者数を増やす,課題内容を改良するなどして,さらに詳しく検討を行う必要があると考える.
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