研究概要 |
現在,多くの日本語母語話者は,学校教育やマスメディアなどを通して,英語に由来する多数のカタカナ表記される外来語(カタカナ単語)に囲まれて生活している。したがって,日本語母語話者の心的辞書には,英単語の音韻情報や意味情報による影響を受けたカタカナ単語の語彙知識が貯蔵されており,英語の既有知識をも考慮した単語認知過程の解明が必要とされる。本研究では,日本語母語話者の視覚的単語認知過程において,英単語に関する語彙知識が担う役割を次の3点から検討することを目的とした。(1)カタカナ単語の語彙特性の解明,(2)カタカナ単語と英単語の語義対応表の作成,(3)心的辞書機構のモデル構築に関する心理実験の実施。 平成21年度は,(1)日本語語彙に含まれるカタカナ単語の語彙特性の解明として,大学生を対象に,カタカナ単語想起調査を実施した。カタカナ単語辞典・英語辞典・英語教科書・NTTデータベース日本語の語彙特性・JACET8000(大学英語教育学会)・英単語親密度表などを参照し,カタカナ単語の使用状況の変化,および近年新たに使用されるようになったカタカナ単語の語彙特性を分析した。想起調査の結果に基づき,語彙判断課題や音読課題などの心理実験の材料を選定し,実験を実施する準備を進めた。つぎに,(2)カタカナ単語と英単語の語義対応表の作成として,カタカナ単語の語義と本来の英単語の語義との対応関係を明らかにし,日英の表記および語義の対応関係を一覧できるコーパスを作成する作業を進行させた。
|