研究概要 |
昨年度までの研究により、視覚、聴覚、触覚といった感覚モダリティ間の同期・非同期弁別の精度は感覚モダリティの組み合わせによって異なり、聴触覚の組み合わせでは他のモダリティの組み合わせに比べて時間応答が良いことが明らかになっている(例えば視聴覚、視触覚の組み合わせの時間限界が約4Hzとなるのに対して、聴触覚の組み合わせの時間限界は約10Hzとなる)(Fujisaki & Nishida,2009,EBR)。本年度は、同期・非同期弁別課題以外の指標であるバインディング(対応付け)課題を用いても、聴触覚の組み合わせの優位性が見られるかを検討した。バインディング(対応付け)課題とは、例えば赤と緑が時間交替する系列と、低い音と高い音が時間交替する系列を同時に提示し、赤のときに低い音、緑のときに高い音が提示されたか、もしくはその逆が提示されたかを判断するような課題である。同期・非同期弁別課題では、「いつ」というタイミング情報が得られれば「何」という内容の情報が得られなくても課題が可能であるが、バインディング(対応付け)課題では、「いつ」というタイミング情報と「何」という内容の情報の統合が不可欠である。本実験の結果、バインディング(対応付け)課題の時間限界は、感覚モダリティや属性の組み合わせに依存せず、どの組み合わせであっても約2-3Hzと共通になることを発見した(Fujisaki &Nishida,2010,Proc Biol Sci)。
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