1. アメリカの入門期英語教育における文字指導のあり方についての研究 フォニックス(文字と音声の関係を表すルール)の指導のあり方について、主に実際の読み書き活動を重視するアプローチ「ホール・ランゲージ(Whole Language、以下WL)」の理論・実践について研究を進めた。特に個々の学びを見とる評価の機会を積極的に位置づけている実践(Kid watching)に着目し、文字・フォニックスの発達状況の見とりと指導の関係を分析することによって、WLの理論におけるフォニックス指導の系統と従来のフォニックス指導における系統の相違点を明らかにした。また、文字指導と読み理解(reading comprehension)との指導の関係性にも着目し、Shared readingの理論・実践における文字指導の位置づけについて分析を進めた。 2. 小学校におけるアクション・リサーチによる文字指導を軸としたカリキュラム試案開発・評価 京都市や寝屋川市などの小中連携を推進する自治体レベルでの小学校英語カリキュラム、および大阪府立河内長野市立天野小学校、成田市立成田小学校等の研究開発学校のカリキュラムを収集し、文字指導がいかに導入されているかを分析した。また、文字指導・フォニックス指導の観点から文部科学省発行の『英語ノート』の分析を行った。こうした分析からは、アルファベットの学習や読むこと・書くことの指導にあまり系統性が意識されていないことや、中学校入門期における文字指導との連携の不十分さが明らかになった。以上の成果や(1)の理論・実践の分析を踏まえて、研究協力校である京都市立高倉小学校での実践検討において、文字指導・フォニックスへの子どもたちの気付きという面から授業研究を行い、カリキュラム試案開発の第一段階として、ゆるやかな系統をもった文字指導のあり方・指導における留意点をモデル化した。
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