研究概要 |
本年度の成果は、以下の三点に集約できる。(1)統一後ドイツにおけるカリキュラム改革に関する実証的資料を継続的に収集できたこと、(2)資料を基に、同一後ドイツにおけるカリキュラム改革の特質を分析できたこと、(3)理論的・実践的課題を明らかにして発信できたこと、である。 この三点に関わる具体的な成果は、以下のようになる。まず、ベルリンの小学校(Grundschule)を訪問し、前年度と同じ教師の指導する学級の授業を参観することができた。さらに、東ドイツ出身の教授学者コリアント(Coriand, R.)教授にインタビューを行い、統一前後の教授学研究・授業実践の状況を聞き取ることができた。これらの資料を基に、ドイツ統一後のカリキュラム改革の特質を「コンピテンシーモデルに基づくカリキュラム改革と授業実践」であると分析し、旧東ドイツ諸州を中心として作成された諸州共同版学習指導要領の構造と課題を実証的に明らかにした。また、これらの資料やインタビューの内容もふまえて、『ドイツ統一と教授学の再編』を出版し、理論的・実践的課題についても言及した。これらの中で、PISAショックをはじめとした「学力」の問題を発端としながらも、東西間格差や移民の問題も孕みながら、子どもたちの「生活」の問題への対応が学校・教師に迫られていること、さらにそれらの課題に応えるための教授学枠組みの再編が重要な課題となっていることを明らかにした。
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