研究課題
本年度は、最終年度として、これまでのドイツ啓蒙主義教育学研究の成果を踏まえて、本研究の核心となる18世紀後半の図像とテキストの相互作用および読者と書物の相互作用を分析した。その相互作用とは、それらの間を仲立ちする「メディア」としての身体によって媒介される。研究代表者は論文や学会発表を通して、これまで未開拓であった教育思想史における身体=メディア論を確立することに努めた。研究の対象として、18世紀後半の教育書・啓蒙書の図版を多く手がけたD.ホドヴィエツキの図像と、それに関わるテキストを網羅的に把握した。21年度に行ったイギリスならびにドイツでの調査を補うべく、本年度もフランスとドイツで、ホドヴィエツキの図像や背景についての現地調査を専門絵画館および博物館などで行った。今回のミュンヘンおよびシュツットガルトで数百枚にも及ぶ絵画の調査によって、特に図像の細部に込められた寓意や、絵画同士の連関をよりよく理解することができた。また同時代の教育者であり、幼児の言語教育の革新者と言われるH.シュテファニについても昨年の現地での調査を元に、子どもと母親をつなげるメディアとしての言語思想としての分析を続けている。ホドヴィエツキやシュテファニら日本ではほとんど紹介されていない絵画家ならびに教育家の思想を対象にする本研究はまだ初期段階と言える。だが、彼らの思想を研究代表者がこれまで考察を続けてきた汎愛派やペスタロッチらの教育家の思想と重ね合わせる事によって、以下の頁にあげるような雑誌論文の執筆および学会発表が可能となった。教育哲学会における発表以外にも、ドイツの国際人間学雑誌"Paragrana"に日本におけるメディアとしての身体を紹介した論文を執筆した。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
教育哲学研究
巻: 101 ページ: 78-99
herausgegeben von Gunter Gebauer/Christopf Wulf,"Paragrana"
巻: 19-1 ページ: 281-303