平成22年度は、前年度の概括をもとに、ルーマニアとスロヴェニアでの現地調査を実施した。 まず、ルーマニアでは、平成22年6月に、ブカレストのスピル・ハレット大学において、生涯学習分野の研究者を対象に聴き取り調査を行った。EU域内最貧国であるルーマニアでは、公的機関による体系だった若年者支援はまだ十分に整備されておらず、若年者の失業率も約4割程度と非常に高い。しかしながら、職業教育・訓練制度の普及や、ボランティア団体が他国との連携により実施している芸術活動を若年者支援の動機づけに応用する取組等、徐々にその対応のあり方にも工夫がみられる。 次に、スロヴェニアでは、平成23年3月に、ラドヴリツァ市を中心に参加型調査を行った。同市には、様々な問題を抱えた若年者に対する支援でEUからも高い評価を得ているPUMというプロジェクトを実施する機関があり、近隣にある公的成人教育機関と連携して各種事業を実施している。当地では、対象となる若年者のプログラムに参加し、また日本の文化についても紹介する中で徐々に彼らに対する理解を深め、滞在後半には、若年者7名及び支援者3名に対し、個別に聴き取り調査を行った。この他、スロヴェニア国教育省の成人教育担当官や国立成人教育研究所所長を訪問し、国家レベルでの取組についてもお話を伺った。また、国立成人教育研究所では、滞在中に招待講演の依頼を受け、若年者問題を中心に我が国の生涯学習の動向に関して講演した。同国の若年者支援の特徴として、(1)支援者が、関連する学問領域を総合的に学んで若年者支援のための資格を取得し、高い専門性を身につけた上で活動していること、(2)若年者一人ひとりの個別性に配慮した支援がなされていること、(3)公的機関による支援の充実により、社会包摂の基盤が整っていること、(4)成人教育機関を利用する地域住民を若年者支援に活かしていること、等が挙げられる。
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