平成23年度は、ハワイ日系移民の子どもたちが受けていた就学前教育を明らかにするために、20世紀初頭の日本語学校幼稚科およびハワイ無償幼稚園協会(Free Kindergarten and Children's AldAssociation of Hawaii)が開設していた幼稚園の保育ついて考察を行うことを目的とした。結果、以下の点が明らかになった。 ・就学前の幼児は家庭で生活する時間が長く、日系一世である親や近隣の人々の日本的生活習慣を保持したコミュニティの中で暮らし、そこで身につけたことをベースに、子どもたちはそれぞれ日本語学校幼稚科や無償幼稚園協会の幼稚園に通っていた。 ・日本語学校幼稚科においては、一日1時間程度の短い時間ではあるが、遊戯や唱歌など、日本の幼稚園の保育項目に近い遊びをしていた。1923年-1927年までは英語で保育を行う児童保護園を開設した幼稚科もあった。 ・ハワイ無償幼稚園協会の幼稚園では、アメリカ進歩主義教育運動に影響を受けた保育の中で、ごっこ遊びやプロジェクト活動などの遊びを行い、日系人だけでなく他の人種の子どもたちも一緒に、アメリカ的な遊びや生活習慣、英語に触れていった。 ・日本語学校幼稚科も、ハワイ無償幼稚園も、その保育内容にはその時代を生きる日系の子どもの姿や日系一世の保護者の願い、そしてアメリカ合衆国の準州としてのハワイ社会の価値・文化などが反映されていたと考えられる。 以上のような成果は、これまで明らかにされていないハワイ日系移民の子どもたちが受けていた就学前教育の一側面を照射するものである。
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