昨年度の研究において混合能力教授には2つの流れが存在したことを明らかにした。本年度は、その2つの流れの内の「共同・協同学習」をさらに検討することから研究に着手した。その結果、昨年度は明らかにできなかった「共同・協同学習」についての理論を発見し、考察することができた。具体的には、ヘレン・コウニーとジーン・ラドゥックらによって行われた協同学習のプロジェクトである「Learning together-working together」を「混合能力教授」の「共同・協同学習」の理論的到達点として位置づけることができた。 共通カリキュラム論の研究については、1960年代から70年代にかけて共通カリキュラム論に大きな影響を与えたリチャード・ピーターズの教育哲学と、それをカリキュラム論へと具体化したポール・ハーストの「知識の形態論」を再検討し、リチャード・プリングやジョン・ホワイトの論にもとづきながら、批判的に検討することを行った。その結果、特にリチャード・プリングの批判に呼応するかたちで、ハーストらの主張にもとづくカリキュラムとは異なる新たな共通カリキュラムが登場してきたことがわかった。ヒューマニティ・カリキュラム・プロジェクトなど、1970年代にスクール・カウンシルが行ったカリキュラム・プロジェクトの中に、そうした代表例がいくつか存在することも明らかになった。 こうした研究成果を確かめ、さらなる資料収集を行うために、本年度も2月に渡英を行った。その際、オックスフォード大学にてリチャード・プリング氏に、ロンドン大学にてスクール・カウンシルで様々なプロジェクトを手がけた経験を持つモーリス・プラツコワ氏に会い、研究についての有用なアドバイスと資料をもらうことができた。来年度は、まず、プリング氏やプラツコワ氏から提供を受けた共通カリキュラム論に関する資料を考察することから始めたい。
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