21年度においては、分権改革、自律的学校経営の理論的・政策的側面に関する文献の収集と読み込みと分析を通して、「分権改革期における地方行政機構分析の理論枠組み」のアウトラインを構成した。上記課題の探求によって、分権改革期においても、教育委員会の、指示や規制ではない、学校に対する応答的・支援的な活動が改革の重要な駆動因となることや、そうした視点から分権的教育改革政策を分析する必要があることが明確となった。また、分権改革期の教育委員会の役割遂行の可能性とその条件について、これまでに得られていた日本の教育委員会調査のデータをもとに、上記で構築した理論的枠組みを活用した実証分析を改めて行い、得られた知見を日本教育制度学会において報告した。得られた知見は、理論的枠組みの精緻化に用いている。 次に、ケンタッキー州の調査を実施し、主としてケンタッキー大学で一次資料の収集に当たり、州の政治的・経済的特性、州教育財政、州教育の歴史と課題に関する文献を収集した。また、教育政策改革に関する州法制、政策導入の背景要因、ケンタッキー州教育改革法の全文、教育改革政策評価に関する情報の収集と資料の収集を行った。収集した資料の整理と基礎的な分析を行い、教育改革形成の背景をなしている、州教育の歴史的展開と課題、州の政治的な特徴、経済状況とその問題点、教育財政上の課題について、その概要を解明しまとめを作成した。ケンタッキー州の改革は、学力問題だけではなく、州経済問題、学区財政の不均衡問題、教員養成・採用の問題などを背景としており、そうした背景がシステミック・リフォーム・コンセプトの採用を促したことが解明された。 第3に、得られた知見をもとに、分権改革期における地方教育行政機関の役割に関して基礎的な分析を行い、理論的枠組みの問題点の把握と精緻化、得られた資料に加えて必要となる資料・情報の把握を継続的に行っている。
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