22年度においては、まず、前年度アウトラインを構築した分権改革期における地方教育行政機構の役割分析のための理論的枠組みを、システミック・リフォームに関する研究を手がかりとして精緻化した。構成した枠組みは、分権改革の中でも学校は支援を必要としており、カリキュラム・スタンダードを中核としつつ、それらに適合した、教育評価の改革、教材の改革、教員養成・採用・研修の改革、学校改善に関する支援の提供、学校の成果を測定し支援を提供するためのアカウンタビリティ・システムの構築が、パッケージでなされる必要があるというものである。また、本理論枠組みを用いて日本における学校支援事業の分析を行い得られた知見を、分権改革期の学校支援の在り方に関する論文として発表した。 次に、21年度調査で収集したケンタッキー州の教育改革(以下、KERA)に関する資料の検討を進め、第一に、KERAの成立背景を解明した。ケンタッキー州の政治的・経済的課題(政治的リーダーシップの問題と州経済の不振)、学区財政の不均衡、教員養成・採用の非効率・不公正などの問題を背景としてシステミック・リフォームをコンセプトとする改革としてKERAが形成されたことを解明した。第二に、KERAの原案を作成した「教育改革のための特別委員会」と「教育水準のための評議会」の活動を分析し、KERA形成の展開を明らかにした。これら2点については、それぞれを学術論文としてまとめ発表した。また、22年度には、二次調査を実施し追加の資料収集を行った。 分権改革期における地方教育行政機関の役割について、教育委員会が指示や規制ではない、学校に対する支援機関として役割を再定義することの重要性が解明され、その具体的内容に関してもいくつの知見が見いだされたが、地方教育行政機構の改革方途の解明のために、先駆的事例であるKERAの分析を継続し、研究知見の蓄積に当たっている。
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