イギリス、アメリカなどにおける学校分権のメリットや日本の学校分権の方向性について『学校事務』において論文報告し、日本教育経営学会(平成23年6月)、日本教育行政学会(平成23年10月)においても学会報告を実施した。 これらの成果の中で、アメリカでは日本と類似で教育委員会が学校に一定の関与をし、完全な学校分権ではない。しかしアメリカでは、教職員の任命に関する学校長の権限が確立されている点、また教育委員会の学校支援機能が充実していること等が、制度的長所として注目される。アメリカ型の学校分権のメリットは、学区が地域コミュニティの特性を重視しながら、学校毎の運営を活性化しようとする制度設計にあると考えられる。イギリスについては、保守連立政権のもとで、いっそうの学校分権と自治体関与の縮小が実施されているが、メリットとしては学校の経営上の裁量が拡大した点があげられる。ただし、コミュニティと学校との連携という点では課題も見られ、引き続き検証課題となる。 自治体の首長、教育長に対する学校分権のメリットの意識調査も実施した。インタビュー調査を通じて、学校分権を実現している自治体では、教育長の裁量が大きいこと、また教育長が教育委員会の学校支援機能を強化していることなどの共通点が浮かび上がった。それと同時に学校に対する配分予算の額を増加させており、学校側も予算立案や執行等においてより精確な手続きを実施していることにより、教育委員会と学校とのパートナーシップが、学校分権の重要な条件であるといえる。
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