本研究は、学校から就労への移行過程に困難を抱える若者を包括的に支援するシステムを構築していく視点に立って、学校教育機関が担う機能の在り方を、とりわけ今日わが国において社会的排除のリスクの高い若者が多く進学する夜間定時制高校を対象に検討していくことを目的にしている。本年度は、(1)捕捉している対象者の2回目の面接調査、および彼ら彼女らが従事する社会的活動関係者への面接調査、社会的活動の参与観察の実施、(2)学外連携を実施している定時制高校2校への実地調査、(3)継続して行っているフィンランドの基礎教育段階における社会的排除を予防するシステム(JOPO)の実地調査を行った。(1)については、定時制高校卒業後、高等教育進学を果たしたものの中退を経験したり卒業後就業をしないという選択をしたりした若者にとって、不安定な生活を送る中で、定時制生活で始めた社会的活動への関わりが大きなよりどころになっている点、さらにかような活動を中心にした生活設計を志向しようとしている点を確認した。正規雇用で就労し生活を形成していくといった道筋とは異なる新しい生き方を模索している点は今後の若者の移行モデルを考えていくうえで示唆に富む。(2)については、福祉や労働といった教師にとって専門知識が乏しい領域に関して、学外の若者支援機関と連携を進めるうえで、学校サイドが受け入れを決定した当該学校の状況、体制整備等について今後検討すべき視点を得られた。(3)については、継続調査によってラポールを形成したJOPOの特別教育教師から、前身であるOMAURA(特別支援教育プログラム)の発足およびJOPO(柔軟な基礎教育制度)へ移行していった経緯について話を聞くことができた。またユースワーカーからの聞き取りを行い、彼女たちがどのように教師と教育活動を行っているのか、その協働の在り方について有益な話を聞くことができた。
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