平成21年度は、研究の目的、研究実施計画に沿って、以下の研究を実施した。 (1) 1980年代以降における日本のセクシュアル・マイノリティに関する教育の変遷、その理論と実態の解明のため、"人間と性"教育研究協議会における教育実践の実態について、文献収集、および実践を行っている教員に聞き取り調査を行った。この聞き取り調査は次年度の半構造化インタビュー調査の予備調査ともなっている。 (2) また、そのつながりから、中学校(京都および東京)においてセクシュアル・マイノリティに関する授業(人権教育)を実践し、生徒の感想文からその成果を分析した。さらに生徒たちによる座談会を企画し、当該授業を受けての感想および成果について率直に語ってもらった。これらから得られた知見は、これまでほとんど実践されていないセクシュアル・マイノリティに関する授業をより有効なものとして再構成するにあたって、非常に重要なものとなった。 (3) 外国調査として、トロント教育委員会(カナダ)によるトライアングル・プログラムおよびヒューマンセクシュアリティプログラムについて、ソーシャルワーカーのスティーブン・ソロモン氏への聞き取りによって現状調査を行った。またLGBTアーカイブセンターやコミュニティセンターを訪問した。同性間での婚姻制度を持っカナダでの教育実践の実態を知ることで、今後の日本のセクシュアル・マイノリティ教育の課題と方向性を考察することが可能となった。
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