本研究は、保育所における異年齢の縦割りクラス編成が、障害のある子どもを含めたインクルージョン保育の展開にどのような形で影響しているのかを検討することを目的としており、今年度は、以下の2つの点について、重点的に調査を実施した。 1つ目は、30年以上異年齢保育の形態を続けている、千葉市内の公立保育所へ、1年間の継続的なフィールドワークを行い、異年齢保育の展開、および子どもたちの姿、保育上の諸配慮の実際についての観察データを収集した。次年度は、フィールドワーク先を拡大し、異年齢保育形態であるという視点での共通性や普遍性等について検証を行う予定としている。 2つ目は、異年齢保育に携わる保育者の意識について、質問紙を用いた調査を対象者を分けて2回実施した。1回目は、障害児保育研修を受けた保育士を対象として、異年齢保育形態を実施している立場での所感を問う内容を実施した(回答率95%)。調査結果から、先行文献で示されている異年齢保育の教育的意義について、保育者自身もそれらを経験として感じていることが確認された。さらに、保育者が保育を展開する上で感じている難しさが、保育所保育指針の示す「保育の質」向上に関連する内容と合致する点が多く見られることも同時に示唆された。本調査結果については、植草学園大学研究紀要第2号で発表を行った。2回目は、千葉市内で異年齢保育を担当しているクラス担任を対象に、平成21年度の保育の中で異年齢保育の形態であることが特別に配慮を要する子どもたちを含めた保育展開にとってよかったと感じたエピソードおよび担当者として難しさを覚えたエピソードについて、記述をお願いした。次年度は、得られた調査結果を集計・分析するとともに、保育計画の中で異年齢保育の形態であることと障害のある子を含めた保育がどのように関連し合っているかについて、調査を進める予定である。
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