研究概要 |
本研究は,教育裁判において,特に法化現象が進行している学校事故の領域において,戦後の学校事故裁判の特徴と教員の危機意識を反映した学校事故対策教員研修プログラムの開発に必要となる基礎的資料を提出することを主眼としている。その基盤として,第一に,学校事故判例の変遷を分析し,保護者および裁判所の学校観の変化について整理する,第二に,教員の学校事故をめぐる危機意識調査を実施し,その現状を分析するとともに課題を抽出する,という一連の作業を要する。研究初年度にあたる本年度は,学校事故に関する判例解釈の先行研究の整理を行った。また,戦後の学校事故に関する裁判例の収集・分析に努めた。その結果,クラブ活動中に発生する学校事故に関しては,裁判所の判断が,学校が一つの条件を果たしていたか否かで大きく異なることが明らかとなった。裁判所の見解を分析すると,顧問の立ち会いがない中で発生した事故については,学校に問われる責任がより重くなる傾向が見られる。クラブ活動の顧問という職務が,法的根拠を有したものではなく,クラブ活動が有する教育的効果を鑑みて慣例的に教員が担ってきた歴史を有するだけに,多忙化を極める教員が,クラブ活動の顧問として,学校事故発生という危機感を持ち,放課後等のクラブの練習に日々付き添おうとする危機意識をどの程度有しているかという点について,来年度以降の調査等で考察していく必要性が高いことなどが明らかとなった。
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