【研究の目的】デューイ実験学校とシカゴ大学との連携による教職教育について検討し、デューイ教育学構想における理論と実践の関係と教職専門職教育について明らかにすることによって、今日の大学の教職課程及び教職大学院における理論と実践の関係と教職専門職教育の在り方について知見を得ることを目的とする。 【研究実施計画】デューイ実験学校とシカゴ大学との連携による教職教育について、「シカゴ大学年次記録」などの史資料を中心にして、理論と実践の関係と教職専門職教育の観点から検討を行う。さらに、これらの教育実践の背景にあるデューイ教育学構想についてデューイの諸著作を用いて検討する。 【結果】シカゴ時代のデューイの教育学構想について、1.過去の研究の成果を現在の必要に合わせて吟味し、新しい諸原理や新しい諸事実に積極的に貢献することを目指す、2.理論的な研究の成果を実際の活動の状態で吟味し公開する学校を持つ、3.教室での理論を実際の学校活動と並行させる、4.実験学校を補助する活動と同時に大学における理論化の作業にも関わるアシスタントを導入することの4点を確認できた。この教育学構想を背景として、シカゴ大学教育学科では、学生の個人的経験を考慮した講義や演習と実践を行い、これらの学習の成果を活かした授業をデューイ実験学校において行うことや、自らの実践的材料・経験を理論化する研究を行うこと及び行った授業や研究の成果を大学の講義や演習において吟味することを通して、理論と実践とを結びつけることを目指す教師教育が行われていた。したがって、今日の大学の教職課程及び教職大学院においても、学生の個人的経験を捉えた研究や実践によって、理論を知的道具として自由に活用できる能力の育成、すなわち、理論と結びついた技術を持った専門職としての教師教育が期待される。この結果は、理論と実践の統合を図る教師教育の実践モデル構築に重要な意義をもつ。
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