デューイ実験学校とシカゴ大学との連携による教職教育について検討し、デューイの教育学構想における理論と実践の関係と教職専門職教育について明らかにすることによって、こんにちの大学の教職課程及び教職大学院における理論と実践の関係と教職専門職教育の在り方についての知見を得ることを目的とした研究である。平成22年度は、『シカゴ大学年次記録』等を中心として、シカゴ大学教育学部(1901~1903年度)のカリキュラムについての調査分析を行い、シカゴ大学教育学科とシカゴ大学教育学部の併合前後におけるデューイの教育学構想及び教職専門職教育論について検討を行った。シカゴ大学では、初等教員養成を行う教育学部をパーカーが、中等以上の教員養成と現職教員向けの教職専門職養成を行う教育学科をデューイが担当していたが、1902年にパーカーが急逝したことにより、デコーイを教育学部長として2つの教育学部門が教育学部に統合された。同学部のカリキュラムの分析を行った結果、パーカー学部長時代に比べて、デューイ学部長時代には、担当教員や授業形態についての大幅な改革が実施され教育学関連科目が充実したこと、そして、入学要件の引き上げや学位の授与による高度な教師教育が目指されたことが確認できた。デューイは、専門職としての教師となるための「学問の重要性」を説いていることから、教育学関連科目を充実させ、さらに、ジュニア・カレッジ相当ではなくシニア・カレッジ相当の教員養成を行うことで専門職として十分な学識のある教員養成を目指し、デューイ実験学校と連携を図ることで、教員養成と教育の学問的・科学的研究との2つの側面の統合を図っていた。この両者の統合を図る教育実践の試みは、今日の大学の教職課程及び教職大学院における教職専門職教育の理論枠組み構築に大きな示唆を与えるものである。
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