本研究は、演劇的手法を用いた学習に関して、(1)日本の教育実践の蓄積の掘り起こし、(2)イギリスのドラマ教育の理論および実践の検討、(3)学校現場との共同授業研究の3つを研究の柱としている。最終年度である本年度は(3)に焦点を当てた。 2012年4月に、演劇的手法を用いた授業の可能性を実践的に追求する研究グループ「学びの空間研究会」を小中高の教員らと共に設立した。以降、隔月で定例会を実施。そこでは、(A)演劇的手法を用いた学習活動の考案と試行、(B)創出された活動の学校現場での実施、(C)その実践報告と検討というサイクルを繰り返してきた。それにより、小学校国語の物語文や外国語活動、中学校国語の文法での実践などを生み出してきた。この試みは、これまでの演劇的手法に関する研究において十分に扱われてこなかった授業論と教師教育とを射程に入れようとするものであり、その本格的な展開は、2013年度からスタートする科研費若手研究(B)「演劇的手法の活用に関する授業論の構築と教師の力量形成の仕組みの開発」に引き継がれる。 また、研究成果の実践的な還元として、教師や演劇関係者向けに、2012年7月には鹿児島県志布志市にて音読指導に関する研修、東京都にて「カリキュラムを通してのドラマ」の講座、8月には山口県で開かれた全国演劇教育研究集会にて「授業で活かす演劇的活動のチカラ 実践編」の講座、2013年3月には帝塚山大学にて「想像力を生かす学習 授業における演劇的手法」の講座を催した。 なお、前年度に全国大学国語教育学会の学会誌『国語科教育』に発表した論文「ドラマによる物語体験を通しての学習への国語教育学的考察 ――イギリスのドラマ教育の理論と実践を手がかりに――」に対して、同学会より「第1回優秀論文賞」を受賞した。
|