研究概要 |
本年度は,1歳児保育の難しさとは何か,インタビュー調査を元に質的分析を行った。その結果,1歳児保育の難しさとは,1歳児保育の特質を構成する条件,保育のポイントの認識と工夫,保育士の1歳児保育に対する思いという3つの枠組みで整理された。それらの影響関係の分析から,その全体像は「1歳児保育の特質を踏まえた援助への志向と構造上の実現困難との間のジレンマ」と捉えられた。 また,アンケート調査の分析では,OECD(2006)が挙げた保育の質のうち,操作性の質とプロセスの質の関連について検討した。その結果,保育所の所属児合計児童数と1歳児クラス所属児童数,時間帯による保育士一人あたりの子どもの人数,活動の変わり目,排泄に誘う時間帯がトラブルの多さに影響を与えていることが明らかとなった。この結果から,これまで児童福祉施設最低基準で規定されていないクラスサイズについて,1歳児保育においては少人数でクラスを構成する必要性が,また,保育士一人あたりの子どもの人数について,より少人数の配置基準へ改定する必要性が示唆された。 観察研究については,公立保育所1園,私立保育所1園で平成22年5月から平成23年2月まで,各園隔週1回,午前中の保育観察及び午前保育後に担任保育士全員を対象としたインタビューを実施した。特に食事場面については,同時に生起する複数の子どもの行動に対して,援助の優先性を瞬時に判断して食行動獲得に向けた援助を行っており,その優先性の判断には,各保育者の実践知が大きく関与していると考察された。
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