今年度の作業は大きく分けて二つあった。一つ目は前年度に引き続いての内外の先行研究の入手・検討であり、二つ目はドイツにおける資・史料の調査であった。前者に関しては、いまだ十分に先行研究がなされていない-ということは方法論的に必ずしも方法論が確立していない-分野にアプローチする一つの方策として、一見疎遠ではあるが、N・ルーマンの諸理論を検討することを行った。N・ルーマンのシステム論は社会学において数多く検討されており、彼の教育(社会学)理論についてもいくつかの先行研究が存在しているが、その一方で、彼のゼマンティーク論についてはいまだ研究が少ない状況である。しかしながら、高橋徹や村上淳一が指摘するように彼のゼマンティーク論はドイツにおける思想史の方法論の一つである「概念史」と密接な関係があり、それは社会理論と概念史研究を架橋する大きな可能性を持ったものである。ルーマンのこうした方法論は本研究に大きな示唆を与えるものであった。後者については、ドイツ国立図書館にて史料調査を行った。今は入手した史・資料を検討している段階である。
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