中等程度の水産教育機関で展開した近代日本の漁業者養成は、農商務省と文部省によって担われた。農商務省管轄の府県水産講習所では、正系の学校とされなかったことによる柔軟な教育課程と、研究・試験機能の内包を特徴とする組織で実際の生産活動を担う人材を多く養成した。文部省管轄の水産学校は、中学校や高等女学校とならぶ中等教育機関として、教育内容や水準もそれらとの整合性が求められた。また、水産学校には、専門学校への接続および判任官への無試験任用などの特典が付与されたことで、公吏となる者や大手水産に関わる者が養成された。すなわち、近代における漁業者養成制度は、管轄官庁や得られる学歴資格により構造化されたことが明らかとなった。
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