本研究は、米国における現職教員の優秀な職務遂行能力の認定に携わるNBPTS(National Board for Professional Teaching Standards)の動向に着目して、その展開過程を明らかにし、NBPTSが大学の教育修士プログラムに与えた影響、及び、学校と大学の教員の役割に与えた影響を追究することを目的としている。 平成22年度は、NBPTSが大学における教育プログラムと学区における現職教育プログラムに与えた影響に関して、まず、文献を基に研究をすすめ、その上で、2月下旬から3月中旬にかけて現地での実地調査を行った。調査は、ワシントン州シアトル市近郊の学区とワシントン大学を中心に行った。ワシントン大学およびシアトル市近郊の各学区は、NBPTSが認定する優秀教員(NBC教員)を養成・輩出するプログラムをそれぞれ開発して実施に移している。ある意味両者は競合関係にあるとも捉えられ、また同時に切磋琢磨し合う関係にある。従って、第一に、NBCの認定証取得に向けた各プログラムが大学や学区においていかに生み出されてきたのかを明らかにするとともに、第二に、大学と学区それぞれのプログラムを比較検討し、大学プログラムの特性と学区プログラムの特性を明らかにした。また第三に、それぞれのプログラムの効果を検証する作業を進めてきた。効果検証に関しては、現地の大学で出された博士論文等も参照し、それらの知見や方法を踏まえて、新たなインタビューガイドの作成なども進めている段階にある。 日本においても、近年は、大学と教育委員会の関係は、競合関係であるとともに、連携しあい、互いに磨き合う関係に捉えなおされつつある。米国での実態と研究成果を踏まえ、日本独自の教師教育のあり方に対を追究したい。
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