研究概要 |
1987年の設立以来、全米教職基準委員会(National Board for Professional Teaching Standards:以下、NBPTSと表記)は、基準を充足した教員に資格証(National Board Certification:以下、NBCと表記)を与える活動を展開してきた。現在、NBPTSが教員の資格証明を行う領域は、教科や児童・生徒の学齢段階に応じて区別された25領域にも及び、約97,000人が、高度な専門性を有した教員としてNBCを受けてNBCTs(National Boards Certified Teachers)となっている。州や学区はNBCの取得を奨励して様々な対応を行い、また、1年以上にわたるNBCTsの認定プロセスには、専門的な訓練を受けたNBCTsが評価者として関わるなど、大学や学区が、NBCTsの評価者養成プログラムおよびNBC取得希望者への支援プログラムを積極的に開発・実施してきた。これらは、組織的な教員リーダーの養成システムが生み出されてきたことの証左と捉えられる。 今年度は、上記の現状を踏まえて、ワシントン州のワシントン大学と近隣学区における、NBC取得に向けたサポートプログラムと、評価者としてのNBCTsの訓練プログラムの現状と課題を明らかにすることを目的に研究を進めた。また、大学によるプログラムと学区が主導するプログラムの比較を試みた。その結果、まず、学区プログラムでリーダーシップを発揮している学区関係者およびNBCTsの多くが、大学プログラム修了者ということが明らかになった。また、評価者としてのNBCTs訓練プログラムにおいても、大学のプログラムが学区プログラムを主導している実態が明らかになった。これらから、大学における新しい修士プログラムが、学区や学校における教員研修プログラムを変容させ、主導してきたことが看取できた。しかし一方で、大学プログラムは学区プログラムに比べてコスト高という課題が存在する。また、学区の人事システムにおいて、NBCTsをいかに配置し活用するかに関しても、課題が残っている。「優秀な教員を最も必要な学区・学校に配置させる」という現オバマ政権の改革指針とあわせて、今後の動向をさらに追究していきたい。
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