研究概要 |
二年目は初年度に引続き、学齢期の子どもの長期欠席と社会経済的要因との関連についての統計資料の収集検討、および社会的排除概念についての理論的検討を行った。詳細な分析は未だ終了していないが、長期欠席者を把握する欠席日数の基準、欠席理由の分類に、およそ1950年代までは自治体ごとに独自の枠組があり、かつ欠席の状況にはきわめて地域差が大きかったことが確認できた。これらは今後、戦前からの就学に関わる地域ごとの課題と戦後の新学制の定着過程との関連から検討する予定である。また、バーン(Byrne, D., 1999=2010)やロザンヴァロン(Rosanvallon, P., 1995=2006)、岩田(2008)の議論から、社会的排除概念が、ポスト福祉国家における複合した関係性の欠如からの社会的不利益を議論するキータームであるが、これまでの長期欠席者についての欠席の背景とその把握についての検討についても、理論的に有用であることが確認できた。これらの検討結果は、学齢期の子どもの欠席を社会経済的な要因との関連から検討する有効性と同時に、欠席をどのような問題と見なし把握するかについて知識社会学の視点からの検討を要することを示している。現代の長期欠席についての実証的な検討には至らなかったが、今回の成果からは現代における不登校の把握に、社会的連帯、社会統制の視点を導入する可能性を示すことができたと言える。
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