本研究の目的は、国私立小学校への受験プロセスと進学後の学習行動に関して、教育社会学的な視点から捉え、「受験(準備)の低年齢化」の実態と課題を明らかにしていくことである。 第一の分析課題は、国私立小学校進学目的を調査し、小学校受験に潜む現代的な家庭の教育戦略を捉えることである。第二の分析課題は、「小学校受験をする家庭は、どのような意識で、どのような準備をし、どの程度の経済的・心理的負担であるのか」を調査し、小学校受験の実態を明らかにすることである。第三の分析課題は、国私立小学校進学後の子どもたちの学習行動、特に中学受験に対する準備状況を調査し、明らかにすることである。 本年度は、首都圏および関西圏において、国私立小学校を受験する家庭を多く抱える5つの幼児教室の協力・支援を受け、平成22年度の小学校受験準備を進めている家庭に対する質問紙調査(「受験準備期」および「受験後」)を行い、第一の分析課題および第二の分析課題について、実証的に明らかにした。 さらに、10教室におよぶ幼児教室担当者へのインタビュー調査を行うことにより、第二の分析課題については、受験家庭自身が意識していない潜在的な側面についても捉えることができた。 本年度の研究成果は、学問的には看過されてきた「早期選抜としての小学校受験」について、個々の事例レベルを超えて、実証的に明らかにしたという点で意義があるとともに、現代的な課題である「家庭の教育戦略にみられる階層間格差」について検討する上でも有意義なものである。
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