本年度は関東地方、関西地方、東北地方で活動する4つの不登校児家族の自助グループ(以下、親の会)を対象にした参与観察調査を実施した。具体的には、2~3ヶ月に1度の頻度でそれぞれの親の会が実施するミーティングに参加し、1)会の活動を通じてどのような社会関係資本が形成されるのか、2)会への参加者は社会関係資本をどう活用しているのかという観点で記録を作成した。同時に、親の会の運営を担う世話人を対象にしたヒアリングを行い参与観察では充分に把握できない点について補足的なデータを収集するとともに、次年度に実施を予定している質問紙調査の依頼を行った。 いまだ仮説の域を出ないが、これまでの調査結果から推察される知見は、以下の5点である。1)親の会に参加するメンバーの多くは、わが子の不登校に悩む経験を有しており、不登校をめぐる経験談を例会で語り・共有することで、会では情緒的な強い紐帯が形成されている。2)他方で、親の会に参加するメンバーの属性は多様であり、会では普段の生活圏内ではめったに出会うことのない人々と交流し、わが子に対処する際に必要な情報を得る機会が提供されている。3)これらの特徴に着目すると、親の会では、結束型と架橋型という性格の異なる社会関係資本が形成されている可能性が高い。4)さらに親の会は相互にネットワークを形成しており、個別の会が他の組織(親の会)とどのような関係を取り結ぶかによって、親の会の中で形成される社会関係資本の特質と機能が異なってくる。5)メンバーがこれらの社会関係資本をどのように活用するかは、会への参加期間と子どもの状態によって異なる。 次年度は、引き続き参与観察を実施するとともに、上記の1)~5)の仮説を検証するために設計された質問紙調査を実施し、質的・量的データの双方を用いて、親の会で形成される社会関係資本のあり方について分析を深める予定である。
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