平成22年度は、21年度に引き続き参与観察調査とヒアリングを行い、その結果を中間報告にまとめて教育社会学会で発表した。調査の結果明らかになった事実は以下の通りである。 第一に、調査対象となった親の会は、a)自助グループの全国的な連絡組織に加盟している会、b)適応指導教室で開催されている親の会の2つに大別できるが、個別の親の会が外部の組織とどのように連携しているかによって、そこで得られる情報や関係をもつことができる人物・組織に違いが生じていた。組織上のネットワークの違いが会に参加する個人が形成するネットワークの性格を規定している点が、今回の調査で得られた発見の一つである。 第二に明らかになったことは、ネットワークの違いに関わらず、親の会で生成・蓄積される資源のタイプは共通していた点である。いずれの会でも「経験を語る」ことが活動の中心で、この活動を通じて、参加者は結束型/架橋型のどちらにも機能しうる社会関係資本を得ていた。どの組織・誰とつながるかという点では、ネットワークの違いによる差異がみられたが、会への参加者が得る絆とその機能はいずれの会も共通していた。 第三に、個別メンバーの関わり方を検討した結果、社会関係資本の活用法に違いがみられた。会に参加して間もないメンバー、不登校を「解決すべき問題」と捉えるメンバーは、架橋型の社会関係資本を活用する姿勢がみられた。これに対して、会との関わりが長く、不登校を現在の社会に対するある種の問いかけとして捉える者は、結束型の社会関係資本を活用する傾向があった。 これまでの調査で得られた知見は、あくまでも例会へ参加する者の様子を観察することによって導出されたものである。今後は、質問紙調査のデータを加味した分析を行うことで、必ずしも例会の活動に積極的に参加せず、親の会の発行物の読者として会に関わる人々にとって、親の会が持つ意味と役割を検討する予定である。
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