平成23年度は、引き続き参与観察調査とヒアリングを実施し、平成22年度で明らかになった知見の妥当性を検討した。最終的に得られた知見は下記の通りである。 第一に、親の会と外部の組織との連携のあり方によって、得られる情報やアクセスできる人物・組織に違いが生じていた。 調査対象の親の会は、(a)全国的な連絡組織に加盟している会、(b)適応指導教室で開催されている親の会の2つに大別できる。(a)では、情報を獲得する経路が幅広く、自らの経験を語る「場」を複数有しており、目的に応じて参加する「場」を使い分ける傾向が認められた。 他方で、(b)では、行政機関と連携して活動している強みを活かし、強力なアウトリーチを行っている点に特徴があった。会に参加することで得られる情報にも違いがあり、(b)のほうが学校関係者からの情報を得る機会が多いことが明らかになった。 第二に、ネットワークの違いに関わらず、親の会で生成・蓄積される資源が共通していた。いずれの会でも参加者は「経験を語る」活動を通じて、結束型/架橋型のどちらにも機能しうる社会関係資本を得ていた。自らの経験を語り、他の参加者の経験談に耳を傾けることで、会への参加者は自らや子どもの状況を肯定的に捉え、今後の展望を模索する手がかりを得ていることが明らかになった。 第三に、参加者による社会関係資本の活用法に違いがみられた。参加して間もないメンバー、不登校を「解決すべき問題」と捉えるメンバーは、架橋型の社会関係資本を活用する姿勢がみられた。これに対して、会との関わりが長く、不登校を社会の現状への問いかけと捉える者は、結束型の社会関係資本を活用する傾向がある。長い期間にわたって親の会に参加する人々は<受苦の経験の共有者>、<「困難」な生の伴走者>として共在する絆を形成・確認する場として親の会を位置づけていることが明らかになった。
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