研究最終度目の平成24年度においては、前年度に引き続き、大学教育の経済的効果に関しては、前年度に引き続き、産業別・企業規模別のクロス収益率の計測結果について、先行研究を参照しつつ、大学教育の経済的効果の時代的変化と、それらがどのような産業・企業規模の変動によってもたらされたものであるのか(すなわち、どのような産業・企業規模の企業において大学教育の需要が高く(もしくは低く)なっているのか)について明らかにした。この結果、1980年~2000年にかけて「卸売・小売業・飲食店」「サービス業」などの産業で、全体的に教育投資効果が減少していることが明らかになった。上記期間において、企業規模・産業計の大学投資収益率が0.4%と若干の減少に留まる中で、これらの産業は算出可能なクロス収益率値のそれぞれ87.1%、80.2%で収益率の減少を経験している。一方で、「電気・ガス・熱供給・水道業(民・公営計)」では、逆に82.1%が増加していることが明らかになった。また前年度に引き続き、大学教育の経済・社会的効果についての文献研究に基づいた分析枠組みの構築について作業を行った。具体的にこの作業のために、日本の教育投資収益率研究を海外の先行研究と比較してどのような強みと弱みを持っているのか、そのうえで今後求められる収益率研究のあり方(分析枠組み)について明らかにした。これらの結果については、日本教育社会学会での発表を行うとともに、『大学経営研究』(査読有り)に掲載されている。これらの発表・刊行を通じて研究成果の報告とする。
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