中国大陸の学校制度研究を土台として、香港、マカオ、台湾および東南アジア諸国を対象に、同じ文化的背景、異なる社会的背景の中で、どのような学校制度を構築しているのかを明らかにするため、実施1年目である平成22年度は、(1)中華圏各国の学校制度を比較研究するための資料収集・情報収集、(2)現地訪問による情報収集および学校訪問・学校関係者インタビューによる情報収集をおこなった。前者については、中華圏における学校制度の特徴を明らかにするという観点から、主に中国語、日本語、英語の文献を幅広く収集し、学校制度の分析および比較の視点の析出を進めた。後者については、台湾訪問調査を実施した。現地では資料収集・情報収集につとめた他、学校訪問調査を実施した。その際、本調査で扱う学校制度は、その教育内容・方法とも密接に関連した部分も含めた広義の学校制度であるため、台北近郊の小学校に加えて、地方の小学校も訪問し、授業参観、教員への聞き取り調査を実施して、台湾における学校教育の特徴や地域や学校によってどのような違いがあるのか等について、具体的に確認した。例えば、日本と同様、台湾の小学校では担任教員がほぼ全ての教科を教える状況にあるなか、新たに導入された英語科については、原則として専任教員をおく方法がとられている。これにより、経験豊富な英語教員が存在する一方で、授業方法や内容のばらつき、教員の他業種流出、教員間や外国人教員との給与の格差、これに関連した学位取得を含めた教員研修の問題などの存在が確認できた。また子どもが英語に接触する量を増やすという観点から教材会社と教員が共同で教材作成をおこなっている。こうした教室環境や教材を整えることは授業内容のばらつきを克服することにもつながるため、日本でも参考になる部分といえよう。
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