本研究は、対象学年、調査票の異なる複数の大学生調査の結果を用いて、それらを現代テスト理論である項目反応理論(Item Response Theory:IRT)によって等化(equating)することで、大学生調査において、経年比較可能なデータを作成することを目的としている。 研究初年度には、大学満足度について、日本版大学生調査プロジェクト(JCIRP)のデータセット(3・4年生用のJCSS2005、JCSS2007、初年次学生用のJFS2008の三つのデータ)を用いて、項目反応理論によって等化を行い、その経年変化及び学年毎の変化する満足度の状況を明らかにした。その結果、全国的な傾向として、満足度が1年次から2年次に向けて落ち込むことが分かった。ただし、1年次には、大学満足度が低くとも、学年進行が進むにつれて上がっていく大学も見られた。 また、大学満足度については、1年次から2年次になる際に満足度が急激に落ち込んでいた大学と統計的に有意な差がなく満足度が落ちなかった大学とで、項目間関連構造分析(Item Relational Structure Analysis : IRS)を行った。その結果、各大学が学生群や学年ごとの大学満足度の順序構造が明らかになった。更に、大学生調査の結果を解釈する際に必要となる基礎データを構築すべく、大学に進学実績の全国の高校3800校の高校進路担当教員に対して、進路指導方針を尋ねるアンケート調査を実施し、次年度の研究に向けてデータ入力を行っている。
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