本研究は、地方分権化された教育行政・制度を有しながら、平等性・公正性と優秀性を高い水準で達成しているとされるフィンランドの教育システムのあり方を、1、教育機会の均等、2、財政配分、3、教員確保、4、カリキュラム(教育内容)という4つの視点から調査研究することにより、「フィンランドの地方分権的教育行政は、平等と公正を担保する機能を制度の中にヴィルトインしている」という仮説の検証を試みるものである。 研究初年度である今年度は、まず、関連する文献や政策のレビューを行った。特に、研究代表者自身がこれまでに実施した調査のうち、義務教育費や教員給与に関する研究など、本研究と関連の深いものについて、地方分権及び平等・公正を担保するしくみという観点から捉えなおし、実態把握を試みた。また、地方分権化及び教育行政全般に関する政策・施策、カリキュラム(地方カリキュラム及び学校基盤カリキュラム:SBC)等の文献・資料を整理するとともに、これらエビデンスをもとに、フィンランドの教育の地方分権化の実態の解明に取り組んだ。ここで得た成果をもとに、基礎調査となる第1次現地調査の調査計画を立案した。 続いて、10月に、第1次現地調査を実施した。当初案では、まず、国レベルでの施策についての調査を行うこととしていたが、文献調査の結果、(1)地域間格差の拡大が認識されつつあること、(2)現在、国が地域間格差を調整するような取組を行っていること、などが明らかとなったため、基礎自治体を対象とする調査に変更した。フィールドとしては、現在、教育予算の削減により、苦境に立たされている中規模都市を選び、自治体の教育局及び基礎学校において、聞き取り調査を行い、特に予算及び教育の質保証の観点から、国と自治体、自治体と学校の関係の解明に取り組んだ。その結果、急激な地方分権化は、景気が最悪の状況において実行されたことから、経済成長を前提とするものであったため、経済が再び行き詰っている現在、大きな問題に直面している状況が明らかになった。
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