本研究では、フランス独自の社会状況や制度的特質を意識した上で、学校教育の主流からドロップアウトする若者、トラッキングのメカニズムに注目する。すなわち、進路指導の観点からSEGPA(適応教育)について、学校回避の観点から2007年度以降の校区制の廃止による影響に焦点を当て、かれらの生きる道を制度的にどのように保障するか考究する。これは、より深刻化する学校教育の機能不全に焦点をあてる研究であり、学校回避(evitement)と隔離(segregation)の原理についての研究でもある。本年度は、昨年に引き続き、一次・二次資料の収集のため夏(7月)および秋(10月)にフランス人研究者とデータの意見交換を行った。夏は、申請者自身が訪問し、国民教育省や、研究所・大学図書館等におけるデータの収集を行った。秋には、フランスの研究者を招聘し、先方の研究状況を報告いただき、意見交換を行った。フランス教育学会の研究懇話会という形をとり、広く学会会員に公開にて行った。研究会では、すでにフランスの教育省が行っている質的調査の動向を紹介してもらいながら、その論争点を明らかにした。ここではこれまで国内において充分に紹介されることの少なかった教育統計および社会統計を活用し、統計から読みとれる学校教育と郊外都市の実態、社会病理、中・長期的な都市政策の欠陥などについて大変意義のある資料収集と分析を行うことができた。その後、成果のとりまとめとして、中間報告にむけた資料の整理、考察、およびインタビュー等のテープ起こしを行い、次年度学会報告等にむけて資料の整理を行った。
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