本研究の目的は、フランスの独自の社会状況や制度的特質を意識した上で、学区制度に注目する。すなわち、2007年度以降の学区制の廃止に向けた政策の影響に焦点をあてながら、どの階層にどのような学校回避がみられ、そのことがどのようなセグリゲーションをもたらすのか解明する。 本年度は、フランス国民教育省における統計データと、フランス研究グループの報告書を参考に分析を行い、フランスにおける現地調査では、パリ市および郊外地域の優先教育校を中心に、学区制度の良し悪しと、各校長にみられる学校回避に対する工夫についてインタビューを実施した。各教員にもインタビューを重ねながら、教員の異動に与える影響あるいは、学校教育計画作成との関係について分析を行った。 以上から、学区制度の廃止に向けた政策が、どのような学校回避を生み出し、保護者の学校選択の戦略に影響を与え、その対応として各学校はどのような工夫をしているかおもに文献より考察を深めた。 メール等によるインタビュー調査からはこれまで以上に、各学校では、小中の連携、小学校の最終学年の生徒と保護者を対象に、中学校の説明会を開催したり、また学校の特徴として、特定の外国語選択を用意したり、スポーツクラブや、音楽、美術部の開設など、努力がみられた。また文献調査からは、一層中間層における学校選択行動がみられ、階層間格差の拡大がみられ、セグリゲーションが進んでいることが明らかとされた。新政権の誕生によって、学区制の見直しが待たれている。今後の動向に注意する必要がある。
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