本年度は、インドネシアの専門高校の市場化と公共性の問題を、日本の保育の事例と照らし合わせて考察を深めた。保育は、教育と福祉の接する領域であり、市場化の波にさらされている。教育と福祉の公共性について、インドネシアと日本の事例から考察を深めた。単にインドネシアと日本の事例を比較するのではなく、私たちに共通する課題である市場化と公共性の探求を異なる立場と観点に立脚して行った。 インドネシアでは、専門高校のカリキュラムの自由化が進み、新たな設立と廃校が続いている。地方分権化が進む過程で、高校の設立が大幅に自由化され、生徒数の減少や廃校まで教師達の自己責任とされるようになっている。地方分権化の名のもとで、学校の市場化が進み、統廃合が生じている。インドネシアの現状は、地域の人が望む学校づくりをどうしたらいいのか?どのように公共性の探求したらいいのか?という問いを投げかける。 この問いは、日本の保育の現場においても、共に問うことができる。この問題は、研究者だけではなく、実践家や当事者や地域の人々と共に模索するべき問いである。そこで、本年度は、教育と保育の市場化の問題を考察する論文を執筆するだけではなく、三回のシンポジウムを主催し、コーディネートし、発表を行った。関係性の教育学会の事務局長として、シンポジウムを企画し、所沢市の20を超える保護者会主催のシンポジウムをコーディネートした。また、大東文化大学文学部主催、関係性の教育学会共催で、地域主権改革と市場化の問題を考えるシンポジウムを企画した。論文執筆と学会発表、シンポジウムを通じて成果を広く還元することができた。
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