今年度は、学校と地域の相互生成過程に関する考察を、いかにして日本の学校における実践に生かすことができるかという探究を行った。インドネシアにおける学校と地域の関係を活性化する二重システム教育(PSG:Pendidikan Sistem Ganda)のカリキュラム実践は、日本における総合的な学習の時間の実践のヒントとすることが可能である。例えば、インドネシアにおけるエクストラ・カリキュラムや地域科の時間、保護者や地域の人々の学校参加、児童生徒や学生の地域への派遣、実践の現場(magan)での学習などは、総合的な学習の時間をどうデザインするかを考える際の豊かなリソースとなりうる。 そこで、本年度は、学校と地域の相互生成を、総合的な学習の時間をどうデザインするかという観点から探究する試みを行った。第一に、日本における総合的な学習の時間のカリキュラムのコンセプトと多様な実践のあり方を考察した。第二に、多様な地域との関係性を紡ぐ総合的な学習の時間のカリキュラム実践について、NPO学習環境デザイン工房による過疎地の小規模校支援プロジェクトなどの事例をもとに考察した。その結果、総合的な学習の時間は、子どもの問いを探究する過程で、学校と家庭と地域を紡ぐ時間となりうることが明らかになった。 こうした研究成果を、教育方法論や教育課程論などの観点から、教科書や論文に執筆し、研究成果を広く社会に還元することができた。
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