本年度は社会階層と社会移動に関する調査(SSM)、東京大学社会科学研究所て実施されいるJLPS(若年・壮年パネル調査)、日本版総合的社会調査(JGSS)のライフコース調査などのデータにより、本課題に関連する計量的分析を行い、そのいくつかについてはペーパーに著して成果を公表した。 教育などの進路選択モデルては、Robert Mareによるロジット回帰分析を用いたTransition Modelがよく知られているが、近年はいわゆる個人の観察できない異質性が考慮されていないとして、新たなモデルが考案されるようになっている。一つの方法として、同一個人を観察し続けることで、不変の要素と可変の要素を切り分けるパネルデータ分析の方法が有力てある。したがって、パネルデータを用いた分析を試行的に行い、そのいくつかを公表した。また統計ソフトの進歩は近年目覚しいものがあるが、最近日本の社会学者の間でも知られるようになっているStataを用いて、教育の進路選択に関する多項ロジット推定の結果について、SPostというプログラムを用いることて、視覚的に分析結果を解釈しやすくなることを示した。また東アジアの教育・進路選択について、上記SSM調査の結果を用いて、日本・韓国・台湾の比較を行った。その結果、発展のスピードか早く、またより遅い時期に発展が始まった韓国や台湾ては、日本と比較して、学歴と初職とのマッチングが弱い傾向があり、このことは教育のあまりに急激な拡大や学歴インフレに、産業構造の変化が追いついていないことを示唆すると結論付けた。JGSSのライフコース調査では、より直接的に、本科研課題に関連する実証分析を行った。若年層にターゲットを絞った本調査の回答者本人については、いわゆる相対リスク回避仮説を支持する結果は得られず、その根拠について今後検討する余地が残された。
|