本研究の目的は、東南アジア地域内における国際的留学生移動に見られる男女間格差の現状と課題、留学生移動をめぐる女性のキャリア形成の意識と実態について実証的に明らかにすることにある。 「人の移動」が進む現代において、男女間格差を構造的に理解するためには、国内の「静的」な格差の構造だけではなく、国際的かつ「動的」な格差の構造に目を向けなければならない。そうした前提のもとに、本研究では、東南アジアのタイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールを対象として、以下の3点について明らかにしようとした。 A)東南アジア4カ国の国内における男女間教育格差の現状と課題; B)国際的な留学生移動における男女間格差の現状と課題; C)国際的な留学生移動における女性のキャリア形成の実態と、女子留学生のニーズ。 研究の初年度にあたる本年度には、研究対象国内における男女間教育格差に関する現状と背景について文献調査により整理するとともに、予備的な訪問調査を実施してきた。予備的調査として、タイ(2009年8月下旬、RIHED、AUN、チュラロンコーン大学、アサンプション大学、マヒドン大学ほか)では、高等教育の国際戦略と留学生移動の全体像に関するヒアリングを行った。また、マレーシア(2010年3月中旬、マレーシア国民大学、ペラ州中等学校ほか)では、女子高校生の留学意識に関する調査の実施可能性を関係教員に打診した。 前年度に、マレーシア・シンガポールで収集した文献資料の調査結果を合わせた上で、今後の調査計画と見通しについて、アメリカ比較・国際教育学会、日本国際教育学会で諮った。それらの学会で受けた助言をもとにして、第2年度には、高校から大学への接続(高大接続)および大学から就職への接続時の留学生を対象とした実地調査に従事し、成果を公表する。
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