本研究は、初等・中等教育段階にある学習者が『誰から見ても根拠が明確で、納得して使用ができる』科学的概念を、『観察・実験の結果に基づいて学習集団内での討議や質疑の活動での検討を通じて』実感を持って構築していくことに『意義を見いだす』理科授業づくりに向けて、推進のために『理科指導力』を備えた理科教師を育成するプログラムのカリキュラムと学習評価指標を開発する基礎的研究である。前年度より文献研究は継続的に進め、研究方法や分析結果の解釈等へフィードバックを行った。また、実態調査として『理科指導力』を意識して教育実践を行っている教師や、その理科授業を履修する学習者に調査協力依頼を行い、理科授業実践についての実態分析を国内2箇所(愛知・島根)で実施した。新しい問題解決場面で、習得したはずの知識を用いつつ児童生徒は「論理的思考力」や「表現力」を発揮させながら観察実験や集団議論を行うことで新たな知見を得たのか、そして習得知識に実感を深めたのか、言動分析を通じて検討している。インタビューでの教師の意見も参考にして、教師が児童生徒に『意義を見いださせる』ために行った指導行為やその意図に基づきながら、授業効果として得られた知見や資料情報を、次年度の『理科指導力』の獲得を目指した教師教育プログラムの開発に生かしていく。このほか国際調査については、台湾の研究者との国際共同研究として理科授業実践の実態分析を実施し、理科授業・教師・学習者の間に見られる結果の類似点・差異点を検討した。
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