研究概要 |
本研究は、初等・中等教育段階にある学習者が「誰から見ても根拠が明確で、納得して使用ができる』科学的概念を、『観察・実験の結果に基づいて学習集団内での討議や質疑の活動での検討を通じて』実感を持って構築していくことに『意義を見いだす』理科授業づくりに向けて、推進のために『理科指導力』を備えた理科教師を育成するプログラムのカリキュラムと学習評価指標を開発する基礎的研究である。本年度はまず外国調査として台湾の分析をさらに進め、理科的教科の教育目標・内容構成や教員養成で掲げる到達目標での理科指導力のあり方を調査し、「論理的思考力」や「表現力」の育成方法を整理して研究者と意見交換を行った。台湾では近年の教育改革をうけ、理科授業の一部で身近な生活・遊び・製作の中の科学技術的事象を取り扱うSTS的プロジェクト学習に傾倒する動きがみられ、学習者にその活動で論理的思考力や表現力を発揮させるアプローチが展開される。この点で、、日本でも観察実験型以外に期待される問題解決型の『理科指導力』の存在とその共通性が見いだせた。その授業実践の普及は、現職向けの大学院講義履修によるものが大きいと思われる。 このほか、研究成果を総括したうえで、教員養成段階の理科教育法科目や教員研修段階の教員免許更新制講習での『理科的指導力』の育成に向けたカリキュラムとその学習評価指標を検討し、その試行を行った。論理的思考力は思考すべき対象となる「課題や根拠を提供する事物現象(関連が期待される要因,非関連だが学習者が影響を受ける要因を含む),基盤となる科学的概念,解釈を支援するメンタルモデル,科学的判断の導出へ付与される適切な条件」等の全体を俯瞰して筋道を整えるもの、表現力は思考結果の分析評価や自信を学習者へ与えるものであることを踏まえ、科学的実践または科学ベースの工学的実践の文脈中で適切に指導・評価することの必要性へ意識を促すものとした。
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