研究概要 |
新学習指導要領では,"算数的活動"が強調された。現在まで算数的活動に関わるような研究・実践は多く行われてきたが,残念ながら系統的なものは少なく,トピック的なものが多い。また学習指導要領でも指摘されているように主目的が"身体を動かす"だけにとどまる内容も多いように感じる。したがって,新学習指導要領実施に伴い必要となってくる,系統的でかつ数学の内容(より高度な内容)をも学習できるような具体事例が少ないのが実情であり,現場の教員が困惑しているのは事実である。また,一方で,幾何(図形)分野が苦手という学力調査等のデータも数多くある。そこで,本研究では,幾何(図形)領域において,現在を生きる子どもにとって意義ある算数的活動(系統的で高度な数学内容をも学習できる)の教育内容・教材の開発を目的とする。 本年度は,幾何領域における「関係(変換)」に焦点をあてて,小学校段階における簡単なカリキュラム試案の作成及びそれらの教材開発を行った。具体的な内容は次の通りである。低学年では「素朴的3次元空間-2次元平面変換の数学」,中学年では「アフィン変換の数学」,高学年では,「射影変換の数学」として,その段階における子どもの認識を調査し,それに見合った教材を開発,検討した。実際に,大阪府の公立小学校1年から6年生で約300人の児童を対象に描画調査を行い,昨年度の同様の調査と比較することから,子どもの認識の系統的な発展の傾向を検討した。そして,先行研究の成果等をふまえ,学校算数において,子どもにとって意義ある"算数的活動"の検討を行い,実際に教材開発を行った。その一部の内容を,実際に教育実験等を行うことから妥当性を検討した結果,妥当性があるという一定の成果を得た。
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